uhb北海道文化放送より抜粋
北海道東部の海を中心にウニやサケなどが大量死するなど、深刻な漁業被害を出した2021年の“赤潮”。あれから1年、今も苦境が続く漁業の現場を取材した。
史上最悪の被害から1年…店頭から消えた”ウニ”
波打ち際が白く茶色く濁っています。青く澄んだ北海道の太平洋の海に異変が起きています 2021年秋、北海道東部の海を襲った赤潮。異常発生したプランクトンの影響で、ウニやサケが大量死するなどし、被害額は国内史上最悪となる81億円にまで膨らんだ。 あれから1年、海産物の状況はどうなっているのだろうか? 釧路市内のスーパー。海産物などが並ぶ店内で、置いていないものがあった。
ウニの姿がない。 北海道東部のウニは出荷量が少なく、市場で1パック1万円の高値で売買されているため、この店では入荷を見合わせているほか、ほかの産地のウニも仕入れが難しい状況だ。
あいちょう・相澤長昇社長: 一大産地だった場所が大打撃を受けると、ほかの産地のウニの値段も上がるので、消費者や売り手にも難しい状況です。浜中産、釧路町・昆布森産、厚岸産、霧多布産のウニが大打撃を受けて、5年~10年は厳しいのではないかと言われています
今の仕事は「ヒトデの駆除」…ウニ漁師の苦境
漁業の現場はどうなっているのだろうか。例年、10月初旬にウニ漁が解禁となる厚岸港。 しかし、ウニ漁は行われていない。 ウニ漁師・横田秀敏さん: 海底のウニを集めて貯めておくとか、ヒトデを駆除する仕事です。水揚げするウニはないです 厚岸町では2021年、赤潮でウニの8割が死んだ。 海底には真っ白になった死骸が広がり、その中には、2022年以降に水揚げされる予定のウニも含まれていた。 ウニ漁師・横田秀敏さん: 死んでいくウニ。トゲがなくなっている。海域によっては、全滅の場所もある 本来であれば10月から漁が始まる予定だっが、まとまった水揚げが見込めず、12月まで見送りとなった。 このため漁師たちは、生き残ったウニをエサの豊富な漁場に移す作業に追われていたのだ。 ウニ漁師・横田秀敏さん: 赤潮前にいれた稚ウニも、ちょっとした場所で生存してます。何割ぐらいか分からないけど、ある程度は生き残って出てきています この日は、300キロ分の生き残ったウニを確認できた。 春に確認できたウニと合わせて、12月には3~5トンほどの水揚げが見込めるという。 ウニ漁師・横田秀敏さん: いつも80トン水揚げしている中、3~4トンは話にならない数字だが、少し明るい兆しだと思います。赤潮は発生してもらいたくない
港に広がる不安…再発の可能性「温暖化続くと否定できない」
深刻な漁業の現場に追い打ちをかけるように、再び赤潮が発生する可能性はないのだろうか。研究によると、2021年は夏の海水温の上昇が続いたことや低気圧の接近で海水がかき混ぜられ、養分が供給されたなどの条件が重なり、原因のプランクトン「カレニア・セリフォルミス」が増殖したとみられる。 「カレニア・セリフォルミス」は水温5度以下で死ぬことは確認された一方、詳しい生態はよくわかっておらず、専門家は今後も注意が必要だと話す。 北大大学院 水産科学研究院・松野孝平助教授: 温暖化によって暖かい状況が続くと、もっと頻繁に赤潮が起こるという可能性は全く否定できなくなりますので、色々な方法で監視していく必要はある 北海道の漁業を揺るがした赤潮。1年が過ぎてもなお、先行きが不透明な状況が続いている。